白石/hitodama128/コースの雑記

白石倖介(ひとだま128)(コース)の雑記です。Tech・まんが・毎月のまとめなどを書きます。お仕事依頼はメールをください(記事を書いたり、編集したり、写真を撮影したりできます)Mail:hitodama128 at icloud.com

リヨン旅行記(オタクがフランスでフリースタイル早口オタクラップをやった話)後編

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「JAPAN TOUCH」会場のEUROEXPOです。

---3日目(11月17日)---

前編はこちら。http://hitodama128.hatenablog.jp/entry/2018/12/06/195512

 

書いている記事に赤を入れたのち、タクシーで会場に向かう。
会場で出会ったTomasはもちろんコスプレで現れた。FGOから、カルデアボーイズコレクションのプロトセイバー(ホワイトローズ)!背も高くてビシッと決まっていた。

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当日のTomas。

キメキメなのだが、肝心の彼は朝から慌てていた。「どうしよ!カジュアルの服を忘れました!」
と、つまりコスで自宅から車に乗ってきたので、普段着が無いという。Tomasにはなんというか、こういうとぼけたかわいいところがある。この日の夜にはAsian dreamer主催の祝賀会的なやつが予定されており、「僕はパーティ、これで出ることになります!」と言っていた。なんか、バッチリ決まってるし良いのでは?と思った。

ブースの設営にあたり、売るもののないブースで、売るものがないなりに準備を進めた。日本で開催したオタラップの動画を流し、その横にはTomasの希望で彼のコスプレ写真(2L光沢紙)販売ブースを設置、さらに「MC Woodの似顔絵コーナー」を開き10ユーロで来場者の似顔絵を描く。後ろにはオタラップのポスター布を掲示してブース設営完了。……これは一体なんのブースなんだ?
などと言っている間に朝10時、開場。とにかく人が入ってくる。我々のブースのすぐ左にニンテンドースイッチのオフィシャルブースがあり、しかもポケモンピカブイ発売直後(当日だったかも)ということも相まって、子どもたちは開幕スイッチダッシュをぶちかしていた。
開場直後から我々は、Tomasのポテンシャルの高さを目の当たりにすることとなった。とにかく数多くのコスプレイヤーが我々の謎ブースを訪ねてくる。「Tomasはいる?」と言った感じでコスプレイヤーがどんどん来る。どうもTomas氏、リヨンコスプレ界でかなり有名な模様。改めて彼のFacebookページとか見に行くと、フォロワーがめっちゃ多い。

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Tomasの写真販売ブース。

お昼ご飯などもくもく食べつつ、気づいたら本番。大きなステージに、前日顔を合わせたDJのRedaくんが板付きで、司会としてTomasとAbiが立つ。彼らの紹介で我々も登壇した。ここでもTomasのお友達が見に来てくれていたようで、彼は黄色い歓声を浴びていた。なんだか全体としてかわいいカルチャーだった。
本番では予め用意したバトルのチュートリアルパフォーマンスを行った。ローカライズしたフランス語文をプロジェクションしつつ、オタクの早口を早口でやる。その後、フリースタイルでもう一度早口。「日本でこういう事をやっているから、フランスの皆もよかったら参加してくれ!」というようなことをTomasに伝えてもらい、無事にアクトは終了。めっちゃホッとした。日本でも受容者の少ない謎の戦いを、謎文化を、遠いフランスの地に運んでしまった。
振り返るとReda君は「日本の見たこと無いやつ」を目の当たりにして、もう心身ブチ上がっていた。

 

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本番直前の我々と、アクトする我々。


我々的には肩の荷が下りてホッとしたのだが、イベント的にはここからが本番だ。現地の人々から参加者を募り、オタラップをやってもらわなければいけない。予選を小さな舞台で行い、そして決勝は先ほど我々が登壇した大きな舞台で行う。こちらも、Tomas・Abiの尽力により結果としては4人のMCが名乗りを上げてくれた。
ステージから降りて、しばし休憩ののち、予選会場へ向かった。いきなりラップをすることになった現地のオタクによる、初の「オタラップ・イン・フランス」をついに見られるのだと思うとワクワクした。会場に着くと、想像を超える状況が目の前に現れた。予選会場はステージもなく、机にDJ・PA卓を置いてヒラの舞台で戦うことになるのだが、本番でマイクが1つ壊れてしまい、もろもろをAbiが持ち前の現場力でどうにか進行していた。まずAbiの司会力の高さにビビる。
バトルでは自身のターンが終わったらマイクを相手に渡す、というシステムが急遽構築されていた。スクラッチで8小節ごとに交換する、というようなこともなされず、各自自身の云いたいことを言ったら相手にマイクを渡す方式だった。ああ、僕は一言も彼らの言葉の意味がわからないけれど、やっていることは第0回で見た「オタラップ」そのものであった。

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特にこのメイド服の男が超早口だった。

言いたいことを携帯電話にメモって、画面と目の前の相手を交互に見ながらマイクを持って戦うオタクたち……全員結構早口……。一言も意味はわからないが、オタクが早口で、自身の言葉の発露を自身が初めて目撃するショックに驚きながら、たどたどしく何かを語る姿……。まさしくオタクの早口をラップと言い張る我々の活動そのもので、爆笑しながら感動してしまった。
原初の感情、何かを伝えたいという気持ち。自身の予想を超えていく自身の言葉や動き。ぼくには、この瞬間のあなたたちの驚きや嬉しいや怒りや焦りやつまづきやたどたどしさが、かなりわかる。全部わかるなんて言えないけれど、少しどころじゃなく、かなりわかる。ぼくらは似ている。そんな事を思った。だから笑った。最高だった。後ろでDJをしているRedaも時々マイクを握って、自身のラップを披露してくれた。

登壇したのが4人だったので、決勝の舞台ではいくつかのアクトを経たのち、トーナメントを組むのではなく登壇者全員を表彰する形で終わった。こういう機転のきかせ方もAbiのすごいところで、めちゃくちゃ能力が高い。
一通り終わったあと、決勝に出てくれた4人には感謝を伝えた。本当に嬉しかった。

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ファイナリストたち。

一通り終わり、自分たちのブースに戻った。Woodさんは似顔絵ブースを引き続き進行、僕はボケッとしていた。すると興奮したReda君がやってきた。
「オタラップはヤバい」
「今日DJできたことを誇りに思う」
「伝わる人は少ないかもしれないけど、0から作っていこう」
「週明け学校が始まったら今日のことをクラスで話すよ」
とめちゃくちゃ嬉しいことを言ってくれた。自身の作った曲なども聞かせてくれた。
「この後、入口近くの小さなステージで友人がダンスを踊る、自分はDJをするので、ぜひそのアクトを見に来てほしい。友人も紹介したい」
と言ってくれたので、ステージを見に行った。
これがまた面白い。フランスの学生たちが同人アイドル活動のような事をしていて、Redaが紹介してくれたのはグループ「Amaitsuki(甘い月)」のAroeさん(甘い月のメンバーは皆、食べ物の名前を名乗っている)。彼女が舞台で歌う、RedaがそのバックDJをするというので客席の最前列で見ることになった。ここでも衝撃的な出会いが。

まさか、フランスに来てMaison book girlのカバーを聞くと思わないので、びっくり仰天した。Aroeさんは日本のアイドルが好きで、ブクガも気に入っているそう。

その後、Reda君のDJコーナーがあり、彼が作ったリミックス楽曲などが流れ、オタクたちが不得手なダンスで盛り上がるという挙動を見て大変楽しかった。例えにSoundCloudの彼のアカウントから1曲引用するが、Reda君はこういう曲を作ってて、会場で爆音で流すのだ。

soundcloud.com

太鼓の達人のビートにBad Apple!!乗せてリミックスするっていう発想に爆笑。僕の知っている曲がかかるたび、僕の反応に彼も喜んでおり、不思議な共感によってコミュニケーションがなされていた。

この催しが終わる頃、JAPAN TOUCHも閉幕。その後、祝賀会が開かれた(Tomasはプロトセイバーのまま参加した)。超へろへろだったのでこの辺から日本語も英語もよくわからなくなってきた。とりあえずワインを飲んで肉を食べた。Woodさんはワイン飲みまくって寝てた。

横の席に座った日本人の方は、「リヨンで神輿を挙げる」というプロジェクトを担っており、神輿を担ぐ職人さんと神主との二人組だった。よくよく聞いたらお二人、行きの飛行機も僕らと同じ、席も僕らの真後ろだったという不思議な縁。神輿職人の宮田さんはヨーロッパでの神輿渡御活動をしており、「祭の男」というタイトルで彼にフォーカスしたドキュメンタリー映画も公開予定らしい。

www.miyatanobuya.com

あまりにもジャパニーズ・トラディショナルすぎて俺たちの企画の意味不明さが浮き彫りになってくる。同じ所で祝賀されてんのが意味不明だ。

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コースだったのだが、メインの写真しか撮ってなかった。美味しかったです。

ご飯を食べてホテルに戻った。超疲れたけど一安心……!

 

---4日目(11月18日)---

JAPAN TOUCH2日目の日曜日。前日アクトを完了しており、この日はやることもないので正直、一人でタクシー乗って観光でも行くかと思っていたのだが、前日多くの出会いがあったので会場に行くことにした。しかし、売るものがないので2日目の当ブースはマジでWoodさんの似顔絵しかプッシュポイントが無い日であった。Tomasは今日は別の衣装、先輩との合わせコスで現れた。

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2日目のTomasと彼の先輩。

Tomasはただでさえ背が高いのに、今日は5cm位あるヒールを履いていた。しかも、
「今日は、カジュアルの服は持ってきたんですけど、普通の靴を忘れました!」と言っていた。相変わらず、ちょっとミスる。

Woodさんは大変そうだったんですが、僕は本当にやることもなかったのでコスプレイヤーの写真を撮ってました。Woodさんから「私の分も、コスプレイヤーの写真を撮って下さい」と司令も下った。皆ハロウィンの仮装のようなお祭りのノリでコスプレしているので、撮影するこちらとしても気が楽だった。「宝石の国」コスの人が数人居たのが、とても印象的だった。アニメで見ているそうで、確かにコスプレ映えするし、しかも「宝石の国」って日本語タイトルで通じるのもすごい。
また、「クッパ姫」「キングテレサ姫」なども居て驚いた。

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キングテレサ姫。

 

さらに、会場で「Fate/stay nightオリジナル版遠坂凛」のコスプレしてる人を見つけてしまい、感激して写真を撮った。今、SN版遠坂のコスプレを見られたことに大変嬉しくなってしまった。彼女はFGOをプレイしているのだが、FGOにはUSサーバしかなく、Euro圏では通信ができない。そのため、プロクシサーバを介してUSサーバにアクセスしてゲームをプレイしている、と言うような話も聴いた。画面も見せてもらった。

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 Suika-Misaさん。

自ブースに戻るとMC Woodの似顔絵コーナーが盛況。家族連れが子供の顔を描いてもらおうと列を作った。また、Reda君が昨日に引き続き同じステージでDJをすると言うので見に行った。
これ、全部そうなのかはわからないんだけど、「DJで4つ打ちが流れるとオタクが走ってきてサビで踊り出す」っていう様式が有るのか?めちゃくちゃ面白かった。
要は、「アニクラ」的な文化がないのだろう、爆音で自分の好きな曲が流れるこのイベントは、彼らにとってマジで貴重な機会なのだと思われる。そこで彼らは原初の動きで身体を動かし、全力で音楽を受け止めていた。
Redaは自分のアクトが終わると、仲間たちを紹介してくれた。昨日知った”Amaitsuki”のメンバーも数人居た。
みんなで輪になって座った。ほぼ全員10代の、日本カルチャーが好きな少年少女たちと会話を交わした。
「なんで日本はカルチャーをもっと輸出してくれないんだ?」という質問が飛んできた。よくよく話を聞くと、アーケードゲームが全く入ってこないため、困っているという。
アーケードゲームはパリにもほとんどないし、特にコナミのゲームができないんだ」
コナミのアーケード筐体はリヨンでは稼働していないらしい。彼らの語り口だとパリにも無さそうだ。しかもアーケードゲームの筐体はサーバで管理されているため、たとえ個人的にフランスに持ち込んでもプレイができないのだ(そんな個人輸入が可能かどうかは別にして)。一人、中でも年上の男が財布を取り出した。白く擦り切れたe-amusement passコナミのゲームをプレイするときに使うユーザ用カード)を出し「これは昔日本に行ったときに作ったけれど、日本でしか使えないんだ」と言った。
「音楽やゲームも、EuroのVPNで弾かれてしまうし、デジタルコンテンツショップのカード決済も通らないんだ」
彼らは、憤っているというよりは、困っていた。横からRedaも会話に加わった。
「僕はDDR(Dance Dance Revolution)を実機でプレイするのが夢なんだ」
この言葉を聞いて、僕は自身の認識の浅さに反省した。ここで会話をするまでは、「彼らのところには日本のアニメやゲームなどの『わかりやすい部分』しか届いていないし、彼らはそれを評価して盛り上がっているのだ」と勝手に思っていた。しかし、それは正しくなかった。彼らの中の何人かは、マジで困っている。そして、日本カルチャーの深層へアクセスする手段を増やすために行動している。VPNを乗り越えるためにプロクシを刺して、日本語を学びながら、必死に”何か”を受容していた。

www.instagram.com

会話を交わした皆と写真を撮った。

 

2日間に渡るJAPAN TOUCHは閉幕した。Redaは僕らとの邂逅に対してマジで、終始バチクソ盛り上がっていた。物販は税関で止まり、売るもののない謎ブースを立ててしまったが、こんな少年と出会えたことだけで試みとしては大成功だった。「必ずまた会おう」と約束して会場を出た。明日はWoodさんと2人で午前中に空港に行くことになるので、ここでAbiとTomasともお別れ。Tomasはカジュアルの服にレディースのパンプスを履いていた。
「いつか日本に来ることがあったら必ず連絡をください」と伝え、彼らと別れた。

---5日目(11月19日)---

前日予約しておいたタクシーに乗り、Woodさんと2人でホテルを出た。20~30分も走るとサン・テグジュペリ空港に着いた。€を使い切りたいのでお土産でも買おうとショップに。どうも、本屋&売店のような店で、雑誌の品ぞろえが良い。コンピュータ誌のコーナーが充実していた。

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コンピュータ雑誌・ムックのコーナー。Linux誌が面出しされてるの、すごい。

ここからパリのシャルル・ド・ゴール空港まで1時間ほどのフライトの後、トランジットして成田まで12時間ほどのフライトになる。リヨンからの飛行機は問題なく飛んだが、トランジットが1時間しかなく、しかもミスって空港内で道を間違え、かなり危険な時間にゲートに着いたが、結局パリから出る飛行機が1時間遅れたためセーフ。
飛行機に乗り、寝るかねまいか、ゲームでもするかと悩みながら1時間ほどがたった時、機内食の案内表が運ばれてきた。その直後、フランス語・英語・日本語のアナウンスが流れ、機内がざわつく。訳された日本語のアナウンスは最低限で、どうにも何が起こっているのか把握できなかったのだが、そんなとき、隣りに座っていた旅慣れたおじさんが声をかけてくれた。どうも機内の警報装置に故障が見つかったらしく、シャルル・ド・ゴールまで引き返すとのこと。ユトレヒトの上空からパリに戻ることになった。

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GDG(シャルル・ド・ゴール)→CDGというあんまり見ない案内画面。2枚目では、高度を下げるためにぐるぐる回っている事がわかる。

おじさんは「あっちでアイス配ってるぜ」など有益な情報をいろいろ教えてくれた。機内食を食べそこねたので白ワインを飲み、アイスを食い、「戻ったらタバコ吸える?」「多分」などの会話をしながらシャルル・ド・ゴールに再着陸。
13時に出る予定の飛行機が14時に出て、15時頃に引き返し、16時頃にパリに再着陸、結局再フライトは19:35に。

ロビーに行くと20€分のお詫び券みたいなものをくれたので、お土産をもう一度購入。集中力も無くなっており、この辺の記憶がくた〜っとしているが、まあ飛んだのだ。

 

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もう集中力も切れ、かなりどうでも良くなっていたので、19時過ぎるという表示を見て笑ってしまった。


そういえば前編では書きそびれていたが、エコノミーでも機内食は全て美味しかった。白ワインを延々と飲んで寝た。起きて少し経ったころ、11月20日17時の日本に着陸した。

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帰りに食べた2食。メインも美味しかったのだが、既成品のパンとチーズが大変まともなので、それだけで全部許せる感じもある。

 

「行きにはうどんを食べたから、成田に帰ったらそばを食べよう」と話していた。降りて直ちに漬物とそばを食べ、なんかすごくホッとした。

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成田で食べたそば。そば湯が飲みたかったのだが、なかった。

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成田空港駅にて。

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こんな旅行でございました。出会い、「オタクがフランスで早口オタクをやる」という謎の実績を得たこと、などなど多くのことに感謝しています。特に、現地の若いオタクが本気で情報を得ようとする姿を見られたことが、めちゃくちゃ嬉しかったです。貴重な体験でした。
引き続き、オタクと早口で喋りながらそれをラップと言い張る活動をしていきたいと思います。