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下っぱ編集者の雑記。

2009年の思い出 第2話 土曜日が見せた夢

前回書いたこと、そしてこれから書いていく文章は、ほぼ全て僕の思い出・記憶と、過去の日記を見て精査したものなので、事実と違う部分があるかもしれない。なのでツッコミがあるときはいつでもコメントください。適宜修正or反論します。

前編はこちら。

http://hitodama128.hatenablog.jp/entry/2017/10/29/222223

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2009年8月。ズットズレテルズが企画したライブ、「世田谷90'presents TEEN AGE SCREAM CONTEST Vol.1~知ったフリしろライオット~」の開催日(よくリンク残ってたよな)。「閃光ライオットで出会った面白いバンドをたくさん出して、下北沢ガレージで大騒ぎしよう」というような催しだ。開催の当日、ヒゲメガネは僕に電話をかけてきた。
「リハ終わったら暇だから下北で会おうよ、会わせたい奴がいるんだ」
下北沢に向かう僕は、「ああ、おそらく先日聞いた挫・人間というバンドの人だろう」と思った。前情報がほとんどなかったうえに、僕自身が今よりももっと人間も態度もできていない(くせにしがらみに起因するプライドだけは高いクソ)オタクだったので、期待よりも大きな不安を持って「年下だし許せるかな」と、出会う前から許せない奴への対処法を考えていたと思う。
今の僕でもそうするから多分間違っていない。

下北沢に降り立ち、空いてるのを見たことがない十字路のあたりで待ち合わせた記憶は正しいだろうか? ヒゲメガネと合流して、横にいる猫背の、太った小柄な男を紹介してくれた。
「熊本でバンドやってる挫・人間の下川くん」
付いてた敬称が「くん」だったか「さん」だったか呼び捨てだったかも定かではないけれど、こういう紹介をされた気がする。場所も紹介もすっごく曖昧なんだけど、自分がした質問だけは今も覚えている。
「コロコロ派ですか?ボンボン派ですか?」
「どっちも読んでましたけど、ボンボン派です」
「ジャンプとマガジンは?」
「マガジンです」

仲良くなれる気がした(僕や下川氏が読んでいた頃、95〜00年あたりのボンボンというのはサイコーに狂っていて、特に『新・女神転生デビルチルドレン』の狂い方といったら、僕と下川氏が揃って単行本巻末の読者投稿イラストまで記憶していたほどのショックがあったのでした。マガジンもラブコメの比率が異様に高く、今の認知のされ方を考えたら納得なんだけど、当時はマイナーな作家だったといっていい久保ミツロウ氏の『3・3・7ビョーシ!』などは、時代性も相まって「セカイ系終焉後の『シティ感』」みたいな物が溢れておりました)。

デビチルの話をしたりエヴァの話をしたりと、盛り上がった記憶がある。この出会いの後も数度の邂逅のたびに僕らは好きなマンガの話を今に至るまでし続けているので、この日に話題に上がった作品をすべて列挙することはできないけれど、少なくともヒゲメガネを置いてけぼりにしたのは確実だ。ついでに言うと先日この3人で飲んだ時も、同じような置いてけぼりをやってしまったので、この3人でいるとおしゃべりヒゲメガネ乳首のおしゃべりターンが少ないことがわかる(いつも申し訳ないとは思っている)。

実は、この日のライブ自体はあんまり覚えていないのだ。ブライアン新世界がライブ終わった後に「また会おうぜ!」って言ってからなぜかベースアンプの後ろに隠れて、数秒後何事もないかのように舞台袖にはけていった、ということしか覚えていない。

そして次に彼らを見たのはこの6日後、閃光ライオットのファイナリストが集った国際展示場だった。
ちなみにこの日、ズットズレテルズは調子が悪かった。というより、ファンキーでインドアなグルーヴを起こす彼らの音楽は、青空の下、野外ステージとはあまりにも親和性が低すぎた。
でも、同じように親和性が低そうな挫・人間のステージは、しかし見る人の、少なくとも僕の心を打っていった。今でも覚えている。訛の抜けない日本語でたどたどしく話す下川氏が、「やろうじゃないか、君たち大馬鹿者の歌だよ」と言って始めた「土曜日の俺はちょっと違う」が忘れられないのだ。
2009年8月8日の土曜日は、誰にとっても彼にとっても僕にとってもありふれた土曜日であったけれどしかし、それでもそれを、その日の自分を「ちょっと違う」と歌う太った小柄な男が、とても素直で、何かが憐れで、でもそれを憐れむことができないほど、美しかったのだ。

この後、ヒゲメガネの「東京来ちゃいなよ!俺と同じ大学行こうぜ」というような誘いに乗った下川氏は上京、肝心のヒゲメガネが先に大学を中退、取り残された下川氏はそれでも大学を卒業して、今も東京で挫・人間を続けている。ヒゲメガネは酷いやつだな。

そんなわけで、私と下川氏、ひいては挫・人間とのおつきあいはここから始まったのでした。東京に来た下川氏は、抜けていくバンドメンバーに四苦八苦しながらそれでもなんとか挫・人間を構築し続け、ファンもどんどん増えていった。僕にとっては漫画の話ができる数少ないお友達で、このタイミングで出会えて本当に良かったな、と今でも思います。あの頃。大学に絶望しながら、エヴァ滝本竜彦の話をして、漫画を読んでいた、僕らのあの頃は、今となっても苦虫を噛み潰すような体験の中にある僅かな幸い、地獄の幸いだったと思います。

最後に、改めて。
人間、頭からペットボトルなんて出ないし、土曜日もだいたいいつもと同じだし、人生プレイステーションやってるだけではどうにもならないことは、他ならぬ彼自身が証明しているのでありまして、それでも誰かが彼らのステージを見ることで、そんな当たり前の日々の中に何かを見るなら、それは誰かの救いになるかもしれないし、そんな救いがはじめにあって、そこから誰かの人生が好転するなら、それは幸いにほかならないと、いつも思っています。

 

挫・人間聴いてない人は、アマゾンで買えるから買おうね!

細かい音源は拾わず、曲数の多いやつを下記にまとめてみた。

 

『苺苺苺苺苺』

2013年6月発売のファースト・フルアルバム。

手に入る音源で最も古いのが多分これ。「人類」「タマミちゃん」から「天国」「式日」へと、個人的なテーマが連鎖して生まれたアルバムだったのだろうなと、今聞いて思う。ちなみにこのアルバムのamazon商品紹介は必読。書いてる人絶対めっちゃ困ってるから。

 

『テレポート・ミュージック』
2015年8月発売のセカンド・フルアルバム。
バンドの名前である「挫・人間」に偽りのないくじけ方は聴いてて清々しい。自身の人生や、掲げたテーマに向き合う辛さがタイトルを歪めていくことで、「コミックバンドなの?」と思わせるような曲名が続くけれど、そこでいきなり「十月の月」のような曲を入れてくるところに、挫・人間の恐ろしさがある。
 

『非現実派宣言』

2016年9月発売のミニアルバム。

「宣言」というのは生まれた以上、表明するしか無いんですよね。山本直樹「レッド」とか読んでてもそうでした。非現実派宣言を打ち立てた彼らの「☆君☆と☆メ☆タ☆モ☆る☆」を聞かされて、その後「愛想笑いはあとにして」を聴いたときに喰らう圧倒的な「置いてけぼり感」を是非体験してほしい。

 『もょもと

2017年10月発売のサード・フルアルバム。

「復活」した彼らがリビルドし、音も詩もネクストステージに至った、最新式の挫・人間が見える1枚。本当に格好いいし、最後の1曲がファースト・シングルからの引用なの、泣いちゃう。過去の自分やこれまでの道のりを肯定できる力、力づくで過去の正しさを証明してしまう強さがある。前述の『テレポート・ミュージック』と今作の間に『非現実派宣言』があることに、強く納得させられてしまう。

 

 

 

気になったらCDを買おう。そうやって後悔を減らそうよ。そして、CD聴いたら、これまでの不幸せを全部持って挫・人間のライブに行こう。何にも解決しないけどそれでいい。

2009年の思い出 第1話 挫・人間と出会う前。

昔から文化史が好きだ。人が何かを作った際に起きた事象を、当事者たちが後から振り返って書いた本などが好きで、そこには、僕が絶対に体験できない過去の熱狂が保存されている。
その熱狂は、当事者からすれば意外となんでもないことであったりして、例えばお酒の席とかで、年上の人の口から驚愕の過去が語られたときにも、その人は意外と飄々としてたりする。
自身が当事者であればあるほど、過去の何でもない会話は忘れてしまうものだけれど、僕が過去にした何でもない会話が、誰かにとって価値あるものなのかもしれないと思うと、それを少しでも保存したい、記憶を記録にとどめたい、という気持ちが、特にここ数年、年々強くなってきた。

だからいくつかの思い出話を、ここに書こうと思う。
本当に書きたいメインストーリーは、公開時に関係各所に確認を取る必要がありそうなのと、今日1日では書ききれない大きな物語になってしまいそうなので、まずは今も深い交友の続く、大切な友人との出会いの話を。

 

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2009年7月1日。当時大学1年生だった僕は、演劇学科に入ったことを心底後悔し、全く学校に行かず、ボケっとゲームなどをして過ごしていた。
その半年前などは、友人のバンドがライブをするのについて行って、ライブ写真を撮ったりしていたのだが、この年、色んな理由で写真を撮ることも出来ず、本当にボケっとしていたのだ。

ボケッとしていたら電話が鳴った。
「『閃光ライオット』ってオーディション企画で組んだバンドがあって、ライブハウスで録音してるんだけど、来ない?」と、たしかそんなような連絡だった気がする。電話をかけてきた友人は、その企画バンドで「スコポン」という名前でドラムを叩いていた。

クソダサい名前のオーディションだなあ、なんて思いながら向かった新宿紅布。
紅布に着くと同級生が数人いて、Macで『閃光ライオット』のWEBサイトを見ていた。
数回の選考を経てファイナリストに選ばれたバンドは、東京ビックサイトの屋外展示場でライブをできる、という触れ込み。そしてその日、ファイリストの公開が数日後に迫っていた。
で、このWEBサイト更新者がヌケサクだったのか、実は公開日の前にWEBサイトが更新されており、動線がないだけで、URLを直に叩けばアクセスできる状態になっていた。見込みのあるバンド名をローマ字にして、ドメインの最後に挿入してリターンキーを押すと「ファイナリスト確定!」的なページに飛ぶのだ。マジでヌケサク。そして、この企画にエントリーしている数々のバンドの中でも、スコポン氏イチオシのバンドがあり、彼らの名前をローマ字にして打ち込んだとき、スコポンは嬉しそうに声を上げた。
ここで僕は初めて、そのバンドの名前を知った。

「お、『挫・人間』残ってる!」

ズットズレテルズではなく、挫・人間の話です。


僕がスコポンから聞いたのは、
「『挫・人間』というバンドが熊本に居て、僕らの一つ下の学年、つまり高校3年生のバンドなのだが、クソオタクでボーカルのデブがヤバい」というような情報だったと思う。

当時ズレテルズのメンバーは皆、挫・人間に注目しており、挫・人間がファイナリストに残ったことを喜んでいた。その後、スコポンは挫・人間となんとかしてコンタクトを取りたいと思い、mixiで連絡したのだ。
「閃光でやるライブの1週間前に、閃光に出てる人たち集めて下北でライブやろうと思ってるんだけど、来ない?」というような内容だったはずだ。
ファイナリストには、閃光ライオット側から交通費やホテルが用意されるのだが、もちろん1週間前に来たバンドにそんな待遇はしてくれないので、熊本のバンドが東京に前乗りする場合、住む場所を確保する必要がある。どう考えても高校3年生の挫・人間にはハードルが高い。送ったスコポンはバカだと思った。
でも多分、挫・人間の下川というボーカルもバカだったんだと思う。8月、挫・人間は東京に来た。1週間前乗りで。
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もっと簡単に書こうと思ったんだけれど、頭から書いたら意外と長くなっちゃったので、今日はここまで。マイペースに連載します。

ピンクから水色へ(「夏の魔物 2017」の感想とレポ<後編>)

ギターウルフの演奏中、プロレスリングに靖子ちゃんのステージが作られていた。ど真ん中でやるという予想が当たり、完全にベストポジションで靖子ちゃんを見られることにワクワクしながら靖子ちゃんの登場を待つ。

ミッドナイト清純異性交遊のオケと共にリングに登場するのは、大森靖子…ではなくピンクのセーラーを着た塚本舞(まいぷに)。見てる時わからなかったけど後で調べたら知ってた、グラドル自撮り部の人だ…!
後ろを振り返ると「超魔物」の旗を振る大森靖子がやってくる。客の間を割り、リングロープを割り、リングに立った靖子ちゃんはまず、まいぷにとディープキス。セルフカバーだと思った。
靖子ちゃんはアイドルをリスペクトしているし、だからこそこの歌を歌うし、僕も、この歌を聞いている時は、靖子ちゃんをアイドルの地平に送りたいと思って手を振るのだけれど、その次にIDOL SONGやるの、批評性が高すぎてズルい。
まいぷには退場、アコギに持ち替えた靖子ちゃん、久々に弾き語りが見られて嬉しい。マジックミラーで感情を高ぶらせ、PINKで爆発した心からの言葉が胸を打つ。

モテたいモテたい女子力ピンクと
ゆめゆめかわいいピンク色が
どうして一緒じゃないのよ あーあ
汚されるための清純じゃないわ
ピンクは見せられない
あたしのゆめは
君が蹴散らしたブサイクでボロボロのLIFEを
かき集めて大きな鏡を作ること
君がつくった美しい世界をみせてあげる
大森靖子「マジックミラー」

ピンク色の丸をくれ
ピンク色の三角をくれ
私が少女になれるようにピンク色をくれ

ピンク色で花まるな
ピンク色のハートを見せてよ
私が少女でいるためにはみんなが優しいことが必要だよ
大森靖子「PINK」


弾き語り音楽表現の閾値を超えたPINKが響く。
間奏の途中、ギターを弾くのをやめ、マイクを手に持った大森靖子が、泣きながら叫んだ言葉に、僕も泣いてしまった。
「心底、不甲斐なくてやるせなくて…………あの、不甲斐ないこととかやるせないこととかって、言わないととっくに売れてるんですよ私は! 夏の魔物のヘッドライナーやってる場合じゃないんですよほんとは!Twitterやらないとあと10倍売れているんですよ私は!」

「それでも! 私はこのフェスに来てしまうようなあなたたちの生活を、呪いを、私の生活も呪いも、大切に大切に!一つも!余すことなく!歌いたいんだ! 」

「本当にこんなのですみませんけど、売れなくてもいいから全然(売れたいけどMステとかも出たいけどほんとは)売れなくても別にいいから!私は私の音楽をやりたいんです!」
その後、「ここの夜景を思い浮かべて書いた曲です」と「TOKYO BLACK HOLE」を歌う。
「私の汚い顔見なくてもいいから、夜景でも見て、聞いてください」って、そう言った大森靖子が美しかった。

HELLO HATE
僕が死ねばいいと願った奴は一人残らずいつか必ず死ぬだろう 忘れるさ
最初から希望とか歌っておけばよかったわ
忘れたわ
愛さない認めない変わらないほうが失くさない 輝きは特別は青春は剥がれていく ボロボロになっていく 神様になっていく君が 透明な銃 放つ自由
時がきた今
大森靖子「TOKYO BLACK HOLE」

歌詞が素晴らしすぎてもう段々とこの文章を書いている意味のなさに喰らってきた。
一人リングに立ち、自身がリングで歌うことの意味を、「リングとは、プロレスとは、こういうものを誠実に吐き出していい場所だ、と捉えている」と語る。
「本当の戦いでしょう、だって、プロレスだって、私だって、歌詞だって、音楽だって、みんなの人生だって。だから逃げちゃダメだと思うんだよね」
「いっぱい連絡してください。私、DM解放してるんで、いっぱいやりとりしてください。これからもみんなの生活とおんなじ、おんなじ位置で一生やっていくので私は」

MC後、続けて歌われた「君と映画」「デートはやめよう」「絶対彼女」には、大森靖子のピンク色の呪いが、祈りが、誠実に吐き出されていたように思う。

昨日ちょっと泣いちゃったから
今日は誰にも会いたくないな
パンのジャムも服についちゃって
あーあ、おんなのこってむずかしい
いつも元気なんてむりだもん
でも新しいワンピでテンションあげて
一生無双モードで頑張るよ
君もかわいく生きててね

絶対女の子 絶対女の子がいいな
絶対 絶対 絶対 絶対 彼女
大森靖子「絶対彼女」

最後は舞台を降りて歌った靖子ちゃん。
「みんなの近くに行きたい!みんなの近くで歌いたい。ワイヤレスマイクある?フラフラ歌います」
「最近気づいたんですけど、あの、ギター私のこと拡張してくれてるんじゃなくて、これ拘束具だって気づいて。シールドあるし。ワイヤレスマイクが一番、拡張だね。 みんなのとこに行きながら歌いたいと思います」


追いかけて バカみたい
ベンチの二人がひらく青春
私との夢のつづきなら
笑いに行くわよ はやくお逃げなさい

あなたは正しい それでもやっぱり
私だって正しい
そんな喧嘩もできなくなるの
春なんて来なければいい

生きている 生きてゆく
生きてきた 愛はただれて
この体を阻んで行く
呪いは水色

生きている 生きてゆく
生きてきた 愛の隣で
私たちはいつか死ぬのよ
夜を越えても

夜を越えても
大森靖子「呪いは水色」

川崎にて最後の1歩
この海にて泣きのあと1曲
わからないなら死ねばいい
わたしはまだ歩ける
大森靖子「さようなら(夏の魔物2017ver.)

観客のど真ん中、「呪いは水色」と「さようなら」をアカペラで歌い、最後に、「ありがとうございました!」と叫んでライブは終了。

靖子ちゃんがファンの気持ちといっしょになって音楽を続けていく、その覚悟や祈りがダイナミックに注がれたライブだった。自主盤時代の「PINK」から解き放たれた言葉が、「呪いは水色」に還っていくような情景が浮かぶセットリスト。夜の川崎、真っ黒な海に、彼女のむき出しの感情が響くその有様を、目撃できてよかったです。

 

大森靖子 at 夏の魔物2017年9月10日

https://youtu.be/nVwk1S4c5vE

「夏の魔物 2017」の感想とレポ<前編>

 

秋葉原サイファー主催いーえっく氏に誘われて、夏の魔物2017 in KAWASAKIに行ってきました。見たい人もそこそこいたし、フェス初めてだったので人に誘われて行けるのはありがたかった。母親もチケット取ってたんだけど、直前で行けなくなったので友人、スバル君にチケットを渡して3人で行ってきた。

川崎駅でスバルと合流、11時からの上坂すみれスタート。初めて生で見る上坂嬢、超かわいくてびびった。確か同い年なんだけど、学校にいたら情念で直視できないと思う。舞台に立ってくれて嬉しい。美人を直視できることは幸いであるからこそ、美しい女性が舞台に立つ仕事を選んだことにいつも感謝している。ちゃんと曲を聞いたのも初めてだったのだが、すごくコンセプチュアルで楽しい曲が多くてよかった。最後に歌った「げんし、女子は、たいようだった。」→「七つの海よりキミの海」は特に素晴らしく、野外でこの歌を聴いていることに頭がチカチカした。

https://youtu.be/DtJUzndPK6c

げんし、女子は、たいようだった。/上坂すみれ

 

上坂すみれ終了後いーえっく氏と合流して、The夏の魔物で踊る鏡るびい嬢を横目に歩く。レンズ入ってないけどメガネはかける、へそ見えてるのにタイツは履く、ガチャガチャ感が良い。大槻ケンヂ登場まで休憩。 青空で歌う大槻ケンヂすごい。すでに無敵。踊るダメ人間でばってん作ってジャンプしてるあたりで、「フェスはセトリが最適化されてて全員無敵なのでは」ということに気づく。このアクトが終わった後、渋谷の鬱フェスに出たという大槻ケンヂ。強い。

 

スバルの一押しでSCOOBIE DOを見るため移動。ピンクのステージは終始やばいやつしか出てなかった。 SCOOBIE DOめっちゃうまい。サウンドチェックの段階で演奏技術がぶっちぎっている。歌も格好いい。もっと見たかったのだけれど、少し隔離されたステージでROLLYの出番が迫っていたので移動。

 

この前後、いーえっく氏は夏の魔物名物らしい焼きホタテ列に並ぶ。ピンクのステージ横に作られたホタテブースはまごうことなき今回の最大手、シャッター列になっていた。 ROLLY生で見るの絶対面白いと思ったんだけど完全に正しかった。The MANJI、全員演奏がヤバい。さっきからそれしか書いてないけど演奏がヤバい奴ばっかり選んで見てるから仕方がない。超絶技巧持ってるおじさん達が集まって、肩の力抜いてバンドやってるのって、いいよなぁと思った。

 

ROLLYが終わった後でメイン会場に戻ると、戸川純with Vampilliaがピンクのステージに立っていた。ヴァイオリン、絶叫、純ちゃんの奇天烈な声が、ホタテ香のする空気を震わせる。ホタテに並びながら「夏の魔物より魔物」「幻影旅団より旅団」「バケモノ」「最強」など好き勝手言いまくる。

 

スバルといーえっくさんはホタテに並んでいたので、僕は一人喫煙所に行った。すると白いステージから重いキックと共に聞いたことのある声。 「取り残された 俺はだせえよ」 「十 ゼロぐらい不利だぜ 皆も言うよ 無理だね」 見る予定はなかった般若を目撃した。これが予想以上にすごい。炎天下の中、狂乱と祝祭の色濃い空気に響く重いトラックと般若の不器用な声が調和して、勝手に感激した。めっちゃよかった。「感動」って、脳に響いた感情の整理がつかないまま身体にその影響がフィードバックすることだと思うんですけど、一言で言うと聞くだけでブチ上がってしまった。4つ打ち韻踏みヒップホップ最高〜! と言う感じ。その横ではホタテの香りに包まれた戸川純が諦念プシガンガを歌っている状況、祈りという言葉だけを御旗に集った異種宗教戦争の観戦者になったような気持ちが、閾値をとうに超えて最後無常を会得したような状態になって見つめてしまった。

 

いーえっくさんが1時間並んでくれたホタテを食べるために離脱。芝生でビールを飲みながら食べるホタテ、めっちゃうまい。4個300円という価格破壊。 ホタテを食べているとさっき般若が歌っていたステージから妖怪のMCバトルのような音がするので振り返ったら人間椅子が演奏してた。今は本当に2017年なのか? ホタテを食べながら野外で人間椅子を見る。平和の横に狂騒。

 

ホタテを食べたらスバル一押しのクリトリック・リスを見る。「パンツ一丁のハゲたおっさんが、自作のトラックに歌を乗せ、股間に着いたシンセサイザーを鳴らす」と聞いていたのだが全く理解が追いつかず、生で見たら全てその通りだったので世の中にはまだ知らないことがたくさんあると痛感した。 クリトリック・リスは出番が前に倒れてて、サウンドチェックがかなり長い時間とられていた。その時間を利用して客席に配られた紙コップ。振る舞いで鬼殺しが注がれていく。楽しい酒相撲の歌で盛り上がったかと思えば突如、「サラリーマンを辞めて歌う今、不意に思い出す1989年」の歌を歌い始めたのだがこれが強い。パンツ一丁なことすらリアルで格好良く見えてしまう。疾走感あるトラックに乗せて何度も叫ぶ哀愁に、泣きの単旋律を響かせる股間のシンセ。 その後は20分よさこいを歌って担がれて帰って行ったらしい。お騒がせの神様だ。

 

中村一義を見に行く。中高生の頃、友人と聞いた中村一義100sのOZ、2005年ってマジか。そんな懐かしい気持ちで中村一義の登場を待つ。出て来た中村一義の歌、楽器隊の演奏も素晴らしく、客の盛り上がりも上々、どれも素晴らしいアクトだったのだが、陽のパワーが強すぎていたたまれない気持ちになってしまい15分で離脱。こんなにインティライミ値の高い人だと思わなかった。中村一義は何も悪くない。これは俺が悪い。

 

 

中村一義のパンチを反芻して少し休み、BILLIE IDLEを見にいく。 運良くほぼ最前列で見ることができたのだが、先ほどクリトリック・リスが歌っていたこの会場、とにかく狭い。4人が所狭しと動き回るには全く足りないステージだった。そして客の量も想像以上。「MY WAY」→「be-bop tu-tu」の流れで会場が動く動く。反響のない環境だからか、ヒラノ氏のコーラスワークが綺麗に聞こえて嬉しかった。持ち時間も少ない中、ほとんどMCをやらずに曲をバシッと決めるスタイルがタイトで良い。後ろの人たちには全く見えないであろうステージを気にしてか、途中、ファーストサマーウイカ氏が柵の上に登り、メンバーもそれに続く。 「BYE-BYE」を歌いながら、青空のもと、柵の上で「BILLIE IDLEは止まりません!」と叫ぶウイカ氏がめちゃめちゃ美しかった。もっとデカい会場で見てえ。

https://youtu.be/P-JJIb_3cwM
BILLIE IDLE® - "MY WAY"

 

その後、スチャダラパーを見る。空が段々と夕に近づく、海風の吹くステージをゆっくりと揺らすスチャダラパー、まずロケーションとシチュエーションが強すぎた。フェスにスチャダラパー、最強。GET UP AND DANCEを聞いて思ったことはBOSEくん死ぬほど上手えなという、ものすごい当たり前の感想でした。

 

スチャを途中まで見たのち、Madison book girlを見る。ブクガを屋外で見る、と言うのが初めてだったのでとても楽しみにしていた。 会場上手側の2列目に入れたのだが、和田輪氏の目の前で私歓喜。 もう夜に差し掛かる会場で、逆光の照明に照らされたブクガが美しい。 rooms→Cloudy Irony→karma→faithlessnessという最適化されたセトリも最高で。月見ルで最前列って、なんかガチの人たくさんいて近づけないんですけど、今回はすっごい近くでダンスを見ることができて嬉しかった。 いーえっく氏に「Cloudy Ironyのサビで前蹴りをした後ぴょんぴょん飛ぶ和田輪氏が可愛格好いいから見て欲しい」と言っていたのだが、この日の前蹴り、今まで見ていたものより殺意が高くてびびった。かっこいい。faithlessnessのトランペット吹くダンスが始まった時、好きすぎて「ふわっす」って声出た。 ビリーもブクガも、時間の少ない中、MCを最低限にして、曲をバシバシ続けるスタイルに勢いがあって、とてもよかった。

https://youtu.be/bY00a8cm6Oo

Maison book girl / cloudy irony

 

ブクガを見たのち、ピンクのステージで歌う町田町蔵を横目に、メインステージに向かう。 メインステージは上手にレッド、真ん中にあるプロレスリングがイエロー、下手にホワイト、という配置。最後はZAZEN BOYS(下手)→BiS(中央)→ギターウルフ(上手)→大森靖子(3ステージすべて) という記載があった。全部見たいし、靖子ちゃんは絶対前で見たいと思ったので、ZAZENの段階でステージ中央の上手側最前列を確保。

 

リング越しに見るZAZEN BOYS、拍の取れない難解な変拍子と完璧な演奏、に不釣り合いにキラッキラしたテレキャスの音が異次元。MCで必ず言う「MATSURI STUDIOからきましたZAZEN BOYSです」には、「繰り返される諸行無常ってこれか!」と思いました。上手すぎ。

 

続いてステージ中央ではBiSのアクトが始まる。プロレスリングは3面舞台に使えるから、いろんな子たちが目まぐるしく動くのにはすごく良いと思う。最前列にいたから会場の熱気もすごくて、最後の曲ではオタクが詰め寄った結果上手側の柵が倒れてしまい、一瞬オタクの巨大ミルフィーユが形成されていた。柵はぐにゃりと歪んでいた。俺とスバルは「明日は我が身」という気持ちで自分の目の前の柵を死守していた。最後の曲で本当に良かったと思う。

 

上手でギターウルフが演奏している間に柵は補修されていた。ギターウルフはもう、バカで、うるさくて、とんでもない。ファイヤー!バコーン!うぉー!って感じだった。MCも歌詞もバカだった。フェスにふさわしい音圧の狂乱。夏の魔物、昼から夜、何時に出てきても最高だったと思う。ギターウルフはリフだけで戦っているから曲の区別がつかない。超褒めてる。

 

大森靖子のアクトについては興奮して歌詞も引用している結果、文章がめっちゃ長くなったので、続けて別の記事で書きます。

C92新譜、遠近感失調眼鏡歌詞置き場

f:id:hitodama128:20170904172516p:image
<01.sensitive>Trackmaked by キャプテン・アキハバラ

*Hook*
歴史も新た逆さになった
こなたと彼方探してるありか
時間も次元も越えてくために
懐古主義者を殺すひとたち
時代遅れな戯言効かず
言いたくないから歩いています
終わらなかった旅をまた始め
今一人で立つ舞台の再演
*
天気の悪さに嫌気がさして
傘なんて持たずに走って
カバンの中身が重く蠢く
iPadとメガネガチャガチャ揺れる
夜に差し掛かる夕焼けの中
乗り込む電車向かう焼け野原
期待と不安と時間の流れ
幾千の弾よ真ん中に当たれ
このまま進めばいいのかなって
どこか消えないものがあるって
信じて前だけ向いて歩いてた
ふりして今でも振り返るんだ
夢の続きがそこにあるって
僕は知ってたつもりだった
けどきっと今もそれは続いてて
ばらばらになった過去が集まるね

*Hook*

サスライトに火が入るとき
いつかうたかたの夢の続き
消える前にほらまた繰り返し
見たいのはただ同じ景色
誰もが見失ったとしても
見捨てられないのは忘れ物
物語の壇上登り
むずがゆいけど僕は今も居て
いつまでも鳴り響いてた音が
いつか聞こえなくなったとしたら
どこまでも続いてた道が
いつか見えなくなったとしたら
音が消えてるわけではなく
道がなくなったわけでもなく
耳と目が悪くなっている
イヤフォンとメガネ越しにその闇を見ろ
愚痴こぼすまえに閉じるのは口
去り際だからこそ美しい
女々しく追ってたスタートライン
足が止まれば終わりのサイン
判断の差異と感覚の間に
咲いた花のような古い痣
少しずつ進化する文化の中で
自分に響くひとひらを語れ

*Hook*

開いていた幕は緩やかに
かぶった埃落とすかのように
暮れる日と共に揺れるのみ
降りるまでまだ下りないように
開けなきゃならない無数のドア
止まらないように願いながら
あと一歩ひとつずつ数え
未来の自分の足跡辿れ

ーーーーー
<02.Inside/Online>Trackmaked by キャプテン・アキハバラ

0と1から意味が始まった
1と0なら2つになった
9インチの大きなファインダ
通して見たら机広がった
ねずみとプログラムを走らせに
寝ずに打ち込んでいた計算機
実現した近未来
今繋げよTCP/IP
インアウトのために鍵叩キー
意味のない質問Gimmickのまま
EtherにInsert in the Internet
and Enter the Underground
機密の秘密鍵 歌う火の鳥
見上げた空はまだ雲ひとつない
Mosaic越しに開いたドアの外
あまりに広大な景色をロード

*Hook*
I/O、唱えてOutからIn
Hello World and Hello(again)
Return押しすぎたエラー画面
Hello World and Hello(again)
さいしょの呪文はTone and Pulse
Hello World and Hello(again)
火の壁を越えて深海へDive
Hello World and Hello(again)
*
縁探し 円渡り 全世界
.分かち 天から地
蜘蛛の巣通るのはYellow Cab
長い赤いオペラもいつか幕
開かれた地で狐を祭り
羅針盤なくとも歩け探検家
目指す先に新種の深海魚
熱く深い熱湯の海の底
橋のLAN干からWAN岸に飛び込む
パケットは自殺集団を運ぶ
意味と価値のない文字列にI/O
吐き出す会場は才能の発露
無限の意味を教わった場所へ
指の先から感謝を伝え
気持ちをデータにできないことに
今も昔ももどかしい

*Hook*

Hello World.

ーーーーー
<03.ミームの見る夢>Trackmaked by JJtmsn、Directed by めりー

うら寒い部屋 横たわる額縁
秋の終わりを告げて鳴く虫
塞いだ口に 見える硬い意思
木々が寄せる渇いた響き
1人だけしか入れない部屋
全員が1人を知覚する演算
横には決して座ることなく
開けてない扉を閉めて去る

*Hook*
ミームの見る夢 集合知の奇貨
気づけば消える故に築けず
感情と身体がシンクせずリンクする
シークエンス辿っても至れないシンプル
瞳が震える冷たい季節
言葉は複雑なほどに稚拙
柊の実の色が彩った一節
身体の記号と同じ色をしてる
*

きみの近似値 辿る夢ばかり
目覚めた時には忘れるかたち
緩やかに繋がれず閃光が焼いた目
終わらない幕間へと落ちて行く黄昏
頭から逆さで 彼方から朝まで
ベッドに射す夏の日が僕の目を覚まさせる
響いたベルに 体を起こし
思いここに無く 今家を出る
無駄な考えと続く頭痛
毎日をこき下ろす無下な日々
季節のせいにはできない体調
算数のように簡単な作業
つまらないことのステレオタイプは
聞いててもやはりつまらないようで
つまるところ僕は今更ながらにして
毎日を夢うつつに過ごしていました
家の中でも外でも同じ
寒い風が吹かないだけマシ
重い体に 炊事洗濯
させるよりも布団に倒れこむ
始まりの幕が開き 登る新しい朝日
頭から逆さま 彼方から真夜中
沈むベッドにセットしたリセット
まぶたの底に たどり着くゲート
夜の中身は数知れず
誰かの夢は誰かの現
手に抱こうとすれば儚い
誰かが抱いた形の帰結
長すぎる髪を切るのは誰?
白すぎる歯がいやらしい
まつげに母の面影があり
鉛筆のように折れる腰骨

*Hook*

現を見て見ぬ振りする夜も
気づけば朝に いずれは渡り
夢から夢をつなぐ扉が
開かなければいいと願うだけ
左手に鍵が 開くまでわずか
その前に声を聞くも叶わず
今は知らない声がする
あなたなのだと思うことにする
誰かが見てた夢の続きは
誰かの見る新しい夢を作り
終わらない時間のふりをして生きる
知覚できぬ奇貨に満ちる今
なおもおぞましい赤い夢
起きたら忘れてまたいずれ
暮れる太陽とずれる胎動が
おぞましく美しい気がしている
嘘が描いた物語
それらが照らしたものは何?
無責任に歩く言葉たち
ブレーキ効かずに去るものばかり
悲劇に喜劇イメージの提示
卑下し奇異に見えた自制心
綺麗に繕うことで虚ろう
崩そうともがく苦労空しく

ミームの見る夢 集合知の奇貨
気づけば消える故に築けず
感情と身体がシンクせずリンクする
シークエンス辿っても至れないシンプル
寂しいことの美しさ
には慣れないからまた崩すしか
できることなく移る自我
最後に幕が降りました


ーーーーー
<04.センス・オブ・ワンダー>Trackmaked by コース

銀河より広い17インチ
お金の価値より尊い日々
60Hzで描き換えられた
画面ではなく夢を見ていた
センスオブワンダー それはどこかに
センスオブワンダー 見えていないのに
センスオブワンダー わからなくても
センスオブワンダー 信じられると

昔の未来に今なお期待
波の行方を指し示す光
魔法と区別のつかないモノの
名前を今でも探してるみたい
少し不思議なぼくの地球儀
ページめくればいつも自由に
飛びまわれれば地図は適当で
等高線もいつも平行です
見えないものは見えないままに
見えてしまったらつまらないかな
なんとかの箱にもちゃんとあるカド
きっさき鋭く突き刺す心
時間と空間の相関を瞬間に
閉じ込める俯瞰に跳んだ有閑
心臓の鼓動を信じることは
空気の振動が人を繋ぐ証左

回る回る アステロイド
語る言葉 集めようよ
数多星よりも明日の景色に
彼方向こうに変わらない道
センスオブワンダー それはどこかに
センスオブワンダー 見えていないのに
センスオブワンダー わからなくても
センスオブワンダー 信じられるよ

剣と魔法とペンとタブレット
握って振って夢を描こうよ
心臓無用の人工無能
見ていた夢は今でも向こう
今はもう無い鮮烈なShow time
コンテンツ増大 系列は崩壊
ガチャっと救済するマニ車
這いつくばってでも縋りたい
テクノロジーで見えるものに
無限に円描くエントロピー
光ケーブルの蜘蛛の糸なら
音より確かな信号の幅
電波が伝播する現代の限界は
孤島の絶海を無くすほどの絶対
動く心肺と動かす身体
近似値を辿る近代と未来

巡る巡る アステロイド
語る言葉 集めようよ
数多星よりも明日の景色に
かなた向こうに変わらない道
センスオブワンダー それはどこかに
センスオブワンダー 見えていないのに
センスオブワンダー わからなくても
センスオブワンダー 信じられるよ

センスオブワンダー それはどこかに
センスオブワンダー 見えていないのに
センスオブワンダー わからなくても
センスオブワンダー 信じられるよ
センスオブワンダー それはどこかに
センスオブワンダー 見えていないのに
センスオブワンダー わからないまま
センスオブワンダー 信じられるよ

ーーーーー
<05.Fly for shine>Trackmaked by ReCO、Directed by めりー

誰かが誰かの母だから
誰かは誰かの娘であって
子供はいつか大人になって
営みの中で死ぬのは勝手
誰かの中から出てきたものに
実存があることなどないのに
思いながらもこの場に1人
気持ちのありかに気づいて欲しい
静かな宇宙で見る夢中夢
それが正夢になればいいね
片腕に付いた緑のセンサ
円錐が示したデータセンター
宇宙の形もわからないまま
僕らがここで生きてるならば
星の数だけある歩き方
夢も希望も探せる身体
衛星の軌道はあまりに長く
星の時間を食べていく
時のかけらが星になるとき
夢を見ることはできなくなって
悲しく赤い血が流れる限り
私が私で居られる形
夢が夢でなくなったとき
いじわるな自我の帰化で目を覚まし

*Hook*
Fly for shine
前には終わった星と海
船に降り注ぐ宇宙線
話に聞いた火花のようで
夢ある限り炎は揺れて
Fly for shine
*

潰えたあなたと辿ったあなた
毎日私が朝を演じた
辺りを包む夜の暗がり
機器の軋む音も聞こえない
終わりを見るために終わらせる
それで済むなら素敵だね
だけどその後も僕らが見てる
光とともに日々を生きていく
朝も昼もない夜の中に
時間見つけようともがくばかり
小さな箱で区切った世界
底が抜けたら全てが瓦解
早いも遅いも好みで語り
こうして言葉はまたばらばらに
とうとう底が抜けました
なのに歴史を英知と呼ぶ浅ましさ
希望の海が絶えました
でも耐える人たちは絶えず立つまま
酸素を空気と呼ぶ前に
大気の危機に気づけない
難しすぎて消えちゃって
今じゃ瘴気が渦巻くばかり
見えないのに
とうに見えないのに

*hook*

Fly for shine.
ーーーーー

Mixed by JJtmsn、めりー
Mastering by コース

差別のループ

最近は読書お休み。

 

インターネットを見ていると、

聞くのも嫌になるような差別的な侮蔑を簡単に見つけることができる。
例えば「中国人・韓国人がどうのこうの」とか
「右/左がどうのこうの」とか。
あるいは「黒人・黄色人種のカラーがどうのこうの」とか。
精神障害者アスペルガー、ガイジ、ガイシャ」とか。
それらの差別的な言葉は嫌いだし、自分で使いたいとは思わない。
慎重に使うべきだとも思う。

そして、このような差別的な言葉を使う人のことも嫌いだ。
意識的に使っているならそれは悪意だと思うし、
無意識に使っているならそれは無知の悪だとも思う。
ただ、こういう言葉を使う人も同じ社会で生きている以上、
これらの人々が嫌いだ、と大きな声で言うこともまた「差別」になるわけで、
結局差別というのは、その時々の社会(とそこにおける正義)の形で変わっていくのだ、と言うところに悩んでいる。

例えば、差別の難しさを端的に表すジョークとして
「俺は差別と黒人が大嫌いなんだ!」なんて言葉があるけれど、
単純に
「俺は差別主義者が大嫌いだ!」と言う言葉だけでもジョークになってしまう。
このジョークを笑えるかどうかはその社会の正義の形で変わってしまうので、
僕は差別主義者が大嫌いであると同時にその大嫌いな人々とどうやって共存していけばいいのかがわからなくてマジで困っている。
事実、ヘイトスピーチを肯定する人々はヘイトスピーチを排斥する人々に対して
表現の自由」を盾に差別を唄って反論するわけだけれど、そんな反則まがいのバカの堂々巡りは、めちゃくちゃすぎて反論のしようがない。

精神障害者が嫌いだ」と歌う精神障害者もいる。
精神障害なんだから私はもっと社会から『優しく』されるべきだ」と勘違いしている精神障害者もいる。

僕はヘイトスピーチも障害者差別も嫌いですが、
ヘイトスピーチをしている人間は死んだほうがいいとか、そういうことは思ってない。
どこまでが弱者の剣で、どこまでが屁理屈で、どこまでがユーモアなのかは人と社会の形によってその時々で違うので、慎重に生きていきましょう、と言うほかないのだけれど。

砂糖菓子は誰のもの(桜庭一樹の話)

少女の比喩としての「砂糖菓子」って誰が言い始めたんでしょうね。

僕は萩尾望都が「10月の少女たち」のフライシー編で使ったやつが大好きです。

10月の少女たち (小学館文庫 はA 45)

10月の少女たち (小学館文庫 はA 45)

 

 「すぎて行く結婚が 愛が 夢と砂糖菓子だった 少女の時間が…」

少し泣いた後で、電話を取って結婚を告げるフライシーの感傷と、
同時に、そのわずかな時間さえあれば結婚できてしまうドライさというか、自分への義理を果たすところに、自らの「少女」に自覚的なところが出てて恐ろしい。
あ、砂糖菓子って言葉自体は「11月のギムナジウム」でも使ってました。

で、桜庭一樹の「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」が話題になったのは2006ごろだそうで。 

主人公、山田なぎさと、転校生である海野藻屑が淡々と親交を深めていくなかで、しかし衝撃的な事件とともに物語は急転、そのまま終わってしまう。

今読んでも恐ろしい話。主人公であるなぎさの成長が物語の終わりに結ばれる点でスタンダードな青春小説だとも言えるし、同時になぎさは「望もうと望まざると、成長せざるを得なかった」とも言える、残酷な物語。
全てが終わってしまった後、「『藻屑』の行方を『渚』が見ている」という構図は、初めから2人は相容れなかったことを(悲しいことに)明示しており、なぎさは初めから渚に立っていたのだというところに物語の胆力が見える。
神様の力を持ったお兄ちゃんがすっごく良いのだ。こういう、不思議なアングルで物事を捉えられるキャラクターを作れるところが、桜庭一樹の強さだと思う。 

 

 

推定少女 (角川文庫)

推定少女 (角川文庫)

 


推定少女

砂糖菓子よりもさらに古い、2004刊行の作品。
家出少女、巣篭カナは白雪という全裸の少女と出会い、大人や社会から逃げていく。唯一にして最大の欠点、そしてこの作品をこの作品足らしめているテーマが全て詰まったエンディングが素晴らしい。物語全体に漂う青臭い疾走感は初期作品ならではのものだと思う。

 

青年のための読書クラブ (新潮文庫)

青年のための読書クラブ (新潮文庫)

 

青年のための読書クラブ
桜庭一樹の本の中で、最も読みやすいと思う。名門女子高に100年存在する不思議な読書クラブを舞台にした年代記。章立てされた年代記は桜庭一樹の得意技で、連綿と続くものの尊さと、そこに必ず吹く新しい風の爽やかさが、読む人間を飽きさせない。
1969年から始まって2019年で終わるのだが、僕は1989年の「奇妙な旅人」と2009年の「一番星」が好き。少女たちが時流に翻弄されながら、それでも果敢に「今」をかけていく物語。

 

年代記が好きならこちらもオススメ。

ファミリーポートレイト (講談社文庫)

ファミリーポートレイト (講談社文庫)

 

ファミリー・ポートレイト

「私の男」で直木賞を受賞した後初の長編小説で、とにかく分厚い。マコとその娘、コマコが辿った足跡を追っていく第1部と、一人で生きるコマコの生活を描いた第2部の二部構成になっている。第1部は儀式であり、第2部は儀式を経た呪いの贖罪だ。この分量を、この熱量をかけて描きたかったことが最後の1ページに集約されるところには、読書っていいな、って思わされる。

 

そして、年代記から、ひと段落ついて、原点回帰のように少年少女の疾走感を纏ったこの作品を描いてくれたことも、とても嬉しい。 

無花果とムーン (角川文庫)

無花果とムーン (角川文庫)

 

無花果とムーン

辺鄙な地方都市、無花果町では、数件のUFO目撃情報を町おこしに使おうと、毎年UFOフェスティバルが催される。そんな不思議な町に住む18歳の少女、月夜と、紫色の瞳を持つ彼女を「ぼくのパープル・アイ」と呼ぶ兄、奈落の物語。
これは読んだのが最近すぎるのと、好きすぎるのでまだ客観的な文章が書けない。
桜庭先生が「砂糖菓子」から続くテーゼをもういちどぶつけてくれたことに、すごく感謝してます。


と、砂糖菓子から無花果に至るまで、何読んでも大好きとしか言えないのですが、
強いて一冊挙げるなら、僕はこの本が一番好きです。

 

少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫)

少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫)

 

少女七竈と七人の可愛そうな大人

自らの容姿を呪いの烙印だと語る、大変美しいかんばせを持って生まれてしまった少女の物語。
北の地方都市に生まれた少女、川村七竃はあらゆるものを呪いながら生きている。いんらんな母親を、そしていんらんな母親に似てしまった美しい自分の顔、美しい顔に好奇の目を向ける男たち。心許せるのは同い年の親友、雪風だけ。

七竃は狭い地方都市の中で狭い人間関係を呪いながら生きているのに、それでもその年齢と美貌は、彼女がそのままくすぶることを許さない。これも呪い。
友人の雪風鉄道模型を走らせる瞬間だけを愛しく思う七竃は、世界を呪いながら、列車を走らせて自分だけの世界を作る。
多重に描かれる彼女の呪いは、しかし様々にポップなキャラクターたちのおかげで時にユーモラスに描かれていて、何より情景描写がずっと、ぶっちぎって美しい。
冬の街に色をつける七竃のヴィヴィッドな赤色、そのものようなメリハリのある描写が大好きです。


読む順番を教えたがるというのは、「いきなりこれを読むとこの作家性がわからないかも」という、読んじゃった人の危惧なので、「これを読んでみたい!」という気持ちには叶わない。あんまり気にしなくていいと思う。
何から読んでもいいと思うんですけど、もし順番を気にするならば、

砂糖菓子→推定少女→赤xピンク→七竃とか
読書クラブ→推定少女→私の男→ファミリー・ポートレイトとか

話題作が気になるなら
砂糖菓子→赤朽葉家の伝説→私の男
とか、おすすめです。

一通りカバーするなら
砂糖菓子→推定少女→赤xピンク→七竃→荒野(3部作で文庫を買うのを強くオススメ)→読書クラブ→赤朽葉家の伝説→私の男→ファミリー・ポートレイト→無花果とムーン
とか。

このあいだの短編集もまだ読めてないので、引き続き桜庭一樹を読みます。